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ジェスパー・オーデルベリ

<ボーヒュスレーン・ビッグバンドとスタンドアップ・コメディアンのジェスパー・オーデルベリ>


写真は最終日2月6日にイェーテボリ東病院内にあるシルビア王妃記念児童病院でのコンサートの模様です。


ジェスパー・オーデルベリ_e0125069_616163.jpgボーヒュスレーン・ビッグバンド(BBB)は、1月20日から2月6日までの期間、スタンドアップ・コメディアンのジェスパー・オーデルベリとツアーを行いました。
ジェスパー・オーデルベリはスタンドアップ・コメディアンと云っても、スウェーデンではCerebral Pares(英語Cerebral paralysis)の頭文字を取って「CPハンディーキャップ」と呼ばれる脳性麻痺により、車椅子での生活を余儀なくされている身体障害者なのです。。
出産時に脳が酸欠状態になってしまった事が原因で、脳性麻痺を起こし、そうなってしまったそうです。
彼はイェーテボリから60キロほど北に在る町、Ljungskile(ユンシーレ)で生まれ、育ちました。この町には、スカンジナビアン・コネクションでお馴染みのピアニスト、ラーシュ・ヤンソンが70年代後半から住んで居ます。
詳しい事はよく知リませんが、彼は学校も普通の学校に通ったそうです。
ちょっと話しただけでも、頭の回転が速く、知識が豊富なのか良く判ります!
健常者の様には喋れませんが、僕でも全く問題無く云っている事は判ります。

通常、コメディアンとかをやっている人は、頭の回転が速くないとやって行けないんでしょうネ!!
このジェスパーと1月20日から2月6日迄の期間、23回のコンサートを行いました。
高校生や中学生を対象にしたコンサートもあり、一般人のコンサートも行い、イェーテボリのジャズクラブ"Jazz Club Nefertiti"でもコンサートを行いました。

イェーテボリからバスで2時間ほど掛かる様な時は、朝7時にBBBの練習場からバスで出発、夜、一般人相手のコンサートも有ったりすると、帰宅は深夜になります。その翌日も7時出発!・・・とかいう感じで、この2週間は、皆、ちょっと疲労困憊という感じでした。(笑)
その上、風邪も少し流行ったりしてしまい、僕も先月末に悪寒と頭痛に悩まされたり・・・と、危うく病気になりそこなったくらいです。
しかし、BBBのメンバーは、ジェスパーの事が皆大好き!
ジェスパーもBBBと一緒に仕事をするのが大好きなのです!

勿論、同じ出し物が多い訳ですが、その場その場のアドリブで、新しい話題・・・・というか出し物がコロコロと出てくるので、23回もステージを共にしていても全く飽きが来ない!
考えてみると、落語なんかもそうですよネ!・・・・同じ出し物でも、毎回、その場の空気で微妙に変わってきます。


ジェスパー・オーデルベリ_e0125069_6164561.jpgこのジェスパーとのコラボレ−ションは、今回で2回目。2006年秋にもツアーをやっています。
浜松に在る平野美術館が季刊している「ART's」という雑誌があります。
浜松を中心に、無償で配布しているタウン誌といっても良い内容なのですが、数年前から僕も寄稿させて頂いています。他にもボストン在住ののトランペット奏者、タイガー・大越さんや世界的に著名な彫刻家の流 政之さん等、いろいろな方々が寄稿している訳ですが、2006年秋の号に寄稿した内容は、このジェスパー・オーデルベリの事でした。


ひょっとして読まれた方もいらっしゃるかも知れませんが、今、読み直してもなかなか図星!と云う感じなので転載して置きます。


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<ART's 第37号/061215/ジェスパー・オーデルベリ>
World News <連載> Sweden編 Vol.8  森 泰人

スタンドアップ・コメディアンとビッグバンドの共演。ところが、そのスタンドアップ・コメディアンは重度の脳性麻痺。今回は、福祉先進国スウェーデンから、少し変わったスタンドアップ・コメディアン、ジェスパー・オーデルベリ氏(Jesper Odelberg)を紹介します。
ジェスパー・オーデルベリ_e0125069_6172854.jpg
本文:

僕が常任ベース奏者を務めるボーヒュスレーン・ビッグバンド(以下 BBBと略)は、普段は国内外の有名なジャズ・アーティストとの活動を行っているのだが、2006年10月中旬のプログラムは、普段のコンサート・ツアーとは少し異なるものだった。
スタンドアップ・コメディアンとビッグバンドのショーなのだが、そのコメディアン、ジェスパー・オーデルベリは脳性麻痺で歩く事はおろか、一人で立つ事も出来ない生まれつきの重度の脳性麻痺なのである。脳性麻痺にも幾つかのタイプがあるのだが、ジェスパーの場合は、出産時に何かが原因で一時的な酸欠状態になった事が原因なのだそうだ。1970年7月23日イェーテボリ生まれのジェスパーが、初めて人前で舞台に上がったのは7歳の時。重度の脳性麻痺を持ちながらも音楽専門のフォルク・ホーグスコーラを卒業し、22歳でスタンドアップ・コメディアンとしてデビュー。最近、テレビ番組を通してジェスパーの名前は知られる様になり、ツアー中もスウェーデン放送のテレビチームが、彼のドキュメンタリー番組を制作すると云う事で、取材に来ていたり、ノルウェー放送の取材も有った。
正直なところ、脳性麻痺のスタンドアップ・コメディアンで一体どんなコンサートになるのかと思っていたのだが、ジェスパーの場合は、まだ何とか喋る事が出来るし、本を読む事も書く事も出来る。歌も歌えるし、特に彼のリズム感の良さには驚きだった!きっと彼の身体は動かなくとも、頭の中は健常者と同じかそれ以上の知能を持っているのである。話していても記憶力の良さや、頭の回転の速さが滲み出ている。そう言えばショーの中で、子供達にホーキンス博士と間違えられた顛末と云う話題もあった。

ショーの内容は、まずBBBが数曲演奏し、その後、ジェスパーが車椅子でステージに登場。彼が色々なペーソスに富んだ話をし皆を笑わせたりしてからBBBをバックに歌い(数曲は彼の作詞)、次の話題に移るという内容。休憩を挟んで約1時間のステージが2回というものである。

重度の障害者である彼の視点が、面白おかしい話の中にも重要な意味を持っていてハッとさせられる。ジェスパーの語りには「洗練された言葉のセンス」を感じる。
ストックホルムに友人を訪ね、二人で高級日本食レストランに行った時の話では、その友人も脳性麻痺だから単純では無い。笑いとペーソスに富んでいる。

特に差別とか偏見をテーマにした話なんかは腹を抱えて笑わされた。でもその中に素晴らしいジェスパーのメッセージが入っている。ちなみに彼のアイドルはレニー・ブルースだと云う。
差別をテーマにした話を一つだけ紹介する。「僕はここ半年間、レイシストになろうと頑張ってみたんだけど、レイシストになる為には、誰か人を憎まなくてはならない!・・・」というところから始まる。
スウェーデンにも人種差別とか偏見は根強くある。特に最近はアラブ系の難民・移民が多い為、生活風習の違いや価値観の違いが様々な問題を引き起こしている。面白おかしくそう言った点に触れてから、「レイシストになろうと半年間努力した結果、ITR(インターナショナル・トータル・レイシズム同盟)の設立を提案する!・・・つまり、全ての人間が自分と違う人間のグループを憎み、その結果、世界中の人間が、全て自国を国外退去になれば良い!・・・劣っているモノは国外追放だ!・・・何に較べて?・・・過去よりも劣っているからだ!・・・」と締めくくるのである。皆、ここで爆笑と拍手喝采!
身体障害者として偏見や差別を受けてきたジェスパーがレイシズムの論理を逆手に取った展開をして差別や偏見に対して、その無意味さを語っているのである。

最後の曲に入る前に「人には皆それぞれの心の中に神が居るのだと思う。僕に取っての神は、・・・車椅子に乗坐っている35歳位の男性で・・・生まれつき脳性麻痺を持ち・・・セクシーで・・」と面白おかしく語って締め括るのだが、何とも云えない暖かさを感じるショーであった。彼のドキュメンタリーは、今秋11月にスウェーデンで放映されるが、日本でも是非、放映される事を期待したい。
きっと日本にも、彼の様な素晴らしい脳性麻痺の人が大勢居ると思う。


森 泰人
スウェーデン在住コントラバス奏者
(http://www.morimusic.jp)
ジェスパー・オーデルベリのホームページ:http://www.odelberg.se/index.html
by yasuhito_mori | 2009-02-08 06:46
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